2010 Fiscal Year Annual Research Report
超短パルス誘導ラマン利得分光法の開発と分子振動制御への応用
Project/Area Number |
21740221
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
寺本 高啓 電気通信大学, 先端超高速レーザー研究センター, 特任助教 (40467056)
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Keywords | 超高速分光 / 光物性 |
Research Abstract |
これまでに申請者のグループでは超短パルス光源および多チャンネルロックイン検出器を独自開発し、フェムト秒スケールでの分子の可視領域超広帯域・超高速実時間分光を実現している。超広帯域・超高速実時間分光法は分子の光誘起電子緩和過程に加え、分子の振動周期より短いパルス光による分子振動の実時間計測を可能にしている。これらの測定結果からは分子のポテンシャル超曲面に関する知見が得られる。しかしながら、この分光法においても分子によってはラマン散乱断面積が小さいため、必ずしも全ての分子の光誘起振動ダイナミクスが解明できるとは言えない。 この問題を克服するため、本研究では超広帯域・超高速実時間分光法に使用するpump光、probe光の他にラマン励起用レーザーを導入し、誘導ラマン過程による能動的な分子振動を引き起こす超短パルス誘導ラマン利得分光法の開発を行う。誘導ラマン利得分光法には背景信号との干渉の効果がなく、従って自発ラマンと同一のスペクトルを与えかつバックグラウンドより高い信号を得ることができるという利点がある。また超短パルス誘導ラマン利得分光法のさらなる発展として、光と分子の相互作用が非摂動論的になるために分子振動のハード化が引き起こされるような強いラマン励起レーザーにより、分子振動の制御を目指す。22年度はラマン励起レーザーと超短パルス光源の同期および128チャンネルロックインアンプシステムを用いたダブルロックイン検波法の確立を行い、電子励起状態にある分子の実時間振動分光を行うことに成功した。またCy3分子においてラマン断面積が小さい原因が振動波束の干渉であることを明らかにした。これらを踏まえてフェムト秒誘導ラマン利得分光を開始した。
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Research Products
(9 results)