2011 Fiscal Year Annual Research Report
高密度電子正孔系のオージェ再結合と熱化ダイナミクス
Project/Area Number |
21740227
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中 暢子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10292830)
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Keywords | 光物性 / オージェ再結合 |
Research Abstract |
高密度の電子正孔系がつくる多様な量子物質相においては、オージェ再結合と呼ばれる無輻射崩壊を伴う多体衝突など、粒子間の相互作用がそのダイナミクスに重要な役割を担っている。本課題では、広範な波長領域をカバーするレーザー分光法を駆使して、オージェ再結合に伴うキャリア発生と励起子の熱化過程のダイナミクスを実験的に追跡し、多体量子系の学理を深めることを目的としている。 本年度は、酸化物半導体の可視光励起の下で生成する自由キャリアの存在をマイクロ波の吸収として測定し、吸収信号の励起波長依存性および遅延時間依存性の詳細なデータを得た。自由キャリアのサイクロトロン共鳴によるマイクロ波吸収の大きさは、光キャリアを生成する光の波長に大きく依存し、直接的には自由キャリアを生成することがないと考えられる励起子吸収端において最大の信号強度を見出した。また、信号強度は励起光強度の2乗に比例して増加することから、励起子の2体衝突によってオージェ再結合が起き、それに伴い自由キャリアが生成されていることが分かった。さらに、サイクロトロン共鳴ピークのプラズマ遮蔽によるシフトおよび共鳴幅から、自由キャリアの密度と散乱レートとの関係を調べた。散乱レートは、密度に依存しない音響光学フォノンによる成分と、密度に線形に比例して増加する成分から成ることが分かった。後者は励起子とキャリアの相互作用によるものであると結論され、初期密度が5x10^<16>cm^<-3>の励起子から、その約1/10000の密度の自由電子が生成される過程であることが分かった。また、吸収信号の遅延時間依存性からオージェ崩壊に伴う励起子のイオン化に要する時間を求め、励起子間の衝突断面積に相当するオージェ係数を見積もることにも成功した。これらは励起子と自由キャリアが関係する多体効果について新たな知見が得られた点で意義ある成果である。
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Research Products
(18 results)
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[Presentation] Exciton dynamics in potential traps and the possibility of Bose-Einstein condensation2011
Author(s)
R.Schwartz, D.Semkat, S.Sonkowiak, H.Stolz, N.Naka, J.Brandt, D.Froehlich, M.Bayer, Th.Koch, H.Fehske
Organizer
International Conference on Correlation Effects in Radiation Fields
Place of Presentation
Rostock, Germany
Year and Date
2011-09-13
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