2009 Fiscal Year Annual Research Report
広エネルギー領域高分解能光電子分光による固体電子構造研究と新たな研究手法の開発
Project/Area Number |
21740229
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関山 明 Osaka University, 基礎工学研究科, 教授 (40294160)
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Keywords | シンクロトロン放射光 / 光電子分光 / バルク電子構造 / 硬X線 / 紫外線 / 電子相関 / 近藤半導体 / 偏光スイッチ |
Research Abstract |
直線偏光をスイッチして測定する硬X線光電子分光では、価電子帯中の原子軌道分布が実験的に判明する可能性が理論計算よりなされていたが、この研究課題において世界で初めてその実験に成功した。さらに多結晶金及び銀の偏光依存硬X線価電子帯光電子分光を行ったところ、銀では4d軌道がほぼ閉殻になっているが、金は5d軌道と6sp軌道が良く混じり伝導電子には半分程度5d成分が混じっていることが分かった。この両者の違いは相対論的効果もさることながら電子相関の違いにも由来することも局所的な電子相関を取り込んだ理論計算から判明した。さらにこの手法をLiRh_2O_4やLa_<2-x>Sr_xCuO_4,CuFe_<1-x>Ni_xO_2等の強相関酸化物やCeT_2Ge_2等の希土類化合物に適用し、価電子帯スペクトルの顕著な偏光依存性を観測した。 極低エネルギー光電子分光では、研究室に建設した装置が完成し近藤半導体系Sm_<1-x>Eu_xB_6,Yb_<1-x>Lu_xB_<12>の高分解能光電子分光を行った。スペクトルの温度及びx依存性は両者で異なり、YbB_<12>系では12.5%のLu置換で微小ギャップが閉じるものの、SmB_6系では15%のEu置換においても微小ギャップが残る結果を得た。またYbB_<12>のスペクトルは5,15Kで殆ど違いが見られない一方で、SmB_6では5,15Kの間で明瞭なスペクトル形状の変化を観測した。以上のことから、YbB_<12>は古くから提唱されている混成ギャッップ模型で電子構造を説明できるが、SmB_6ではそれでは不十分で、さらなる効果を取り入れないと電子構造を説明できないことが判明した。
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