2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740231
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅野 建一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10379274)
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Keywords | 電子正孔系 / 励起子モット転移 / 低次元系 / デイラック電子系 |
Research Abstract |
1.電子正孔系の熱平衡状態:広い密度と温度の領域を一つの理論的枠組みで記述する新しい手法を開発した。具体的に言えば、これは電子間、正孔間、電子正孔間のT行列、電子および正孔の自己エネルギー、および遮蔽効果の三者を自己無撞着に決定する摂動論である。既存の摂動理論の問題点は、プラズマ中に埋め込まれた電子と正孔の相関を考察しているがために、プラズマと励起子ガスの中間的な状況を記述できない点にあった。我々の理論ではこの問題が解決され、励起子のイオン化率に相当する量を計算できる。さらにこの情報を遮蔽効果へフィードバックし、励起子形成によって遮蔽効果が抑制される機構まで取り込んでいる。これにより、励起子ガスと電子正孔プラズマ間の励起子モット転移やクロスオーバーを詳細に調べることが可能になった。この手法では、バンド間遷移の光学スペクトルに関する情報も同時に計算することができ、実験結果を半定量的に再現することができた。 2.カーボンナノチューブ上の荷電励起子・励起子分子:既存の理論が無視してきたバンドの非放物線性、構造因子、遮蔽、自己エネルギー補正の効果を取り入れた計算を行った。その結果、主に遮蔽と構造因子の効果が、束縛エネルギーを小さく抑えることを示した。遮蔽効果が荷電励起子よりも励起子分子に対して強く働くために、励起子分子の束縛エネルギーの方が荷電励起子の束縛エネルギーよりも小さくなる。また、クーロン相互作用の短距離部分から生じる準位の微細構造についても調べ、実験で測定されている荷電励起子ピークが、励起子ピークから大きく低エネルギー側に現れることに対する解釈を与えた。 3.ディラック電子系の設計:固体のバンドにディラック点が出現する条件を提示し、手軽にデイラック電子系を設計する指針を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子正孔系の研究について本年度大きな進展があり、方法論の開発に一定の目処が立った。また、ディラック電子系についても、物質設計の観点からの研究や、カーボンナノチューブ上の励起子分子、荷電励起子の計算が完成し、これを論文にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、電子正孔系に対して開発した手法を様々な系に適用していく。特にディラック電子系における多体効果を調べることが大きな目標となる。研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。
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Research Products
(12 results)