2010 Fiscal Year Annual Research Report
量子縮退領域における1次転移の臨界終点がもたらす量子現象とその波及効果の解明
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21740240
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 真仁 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 特任准教授(常勤) (40334346)
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Keywords | 価数転移 / 量子臨界現象 / 量子臨界価数ゆらぎ / Ce化合物 / Yb化合物 / 重い電子系 / 非フェルミ液体 / 価数揺動 |
Research Abstract |
近年、YbRn_2Si_2やβ-YbAlB_4をはじめとする複数のYb化合物やCe化合物において、磁気帯磁率(χ~T^<-0.6>)、比熱(C/T~-1ogT)、電気抵抗率(ρ~T)などの物理量が異常な量子臨界現象を示すことが観測され、大きな問題となっている。本研究では、F電子の局所相関の効果を取り入れた、Yb(Ce)の価数ゆらぎのモード結合理論を構築した結果、上記の非従来型の量子臨界現象が自然に説明できることを示した。具体的には、F電子間の強いクーロン斥力の結果、臨界価数ゆらぎが、波数Q=0のまわりでほとんど分散をもたない局所的なモードとなって生じた結果、異常な臨界指数が生じることを明らかにした。最近の硬X線光電子分光実験により、T=20Kでβ-YbAlB_4のYbの価数が2.75であり、価数ゆらぎの重要性が報告されたが、臨界価数ゆらぎが問題解決の鍵を握ることを指摘した本研究の意義は極めて大きい。また、CeRhIn_5で観測された、圧力下でのフェルミ面の劇的な変化や非フェルミ液体的な輸送現象などの実験事実が、磁気転移と価数転移の交差相関によって統一的に説明できることを理論的に示した。Ceの4f電子と伝導電子の混成強度が小さい場合に、磁気転移の臨界圧力とCeの価数クロスオーバーが起こる圧力が一致することを見出し、両者の制御パラメータを明らかにした。これにより、重い電子系で従来議論されてきたRKKY相互作用と近藤効果の競合に加えて、価数転移の量子臨界点からの近さという、新たな尺度が必要であることを明らかにした意義は極めて大きい。
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Research Products
(8 results)