2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子縮退領域における1次転移の臨界終点がもたらす量子現象とその波及効果の解明
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21740240
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 真仁 九州工業大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (40334346)
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Keywords | 量子臨界現象 / 強相関電子系 / 価数転移 / 量子臨界終点 / 重い電子系 / 1次相転移 / 非フェルミ液体 |
Research Abstract |
量子縮退領域における1次転移の臨界終点とその波及効果がさまざまな系での物性異常の引き金となっており、これまで謎とされてきた現象を解明する鍵を握ると考えられることから、本研究では1次の価数転移の量子臨界点とそれがもたらす新しい量子現象を解明することがその目的であった。特にCe化合物やYb化合物などで最近問題になっている、既存のスピンゆらぎの量子臨界現象に従わない、新しいタイプの量子臨界現象の起源を明らかにし、理論的枠組みの構築に取り組んだ。その中で最も重視した点は、f電子間のオンサイトのクーロン斥力がいま問題の系の電子状態に作用する相互作用の中で最も大きな寄与をするので、この効果を取り入れた上で価数転移の量子臨界現象の理論的枠組みを構築する必要があるという点であった。そこで、CeおよびYb化合物の電子状態を記述する基礎的模型である、周期アンダーソン模型において、オンサイトのf電子間のクーロン斥力が大きい極限の電子状態を鞍点解として求めておいて、その状態を用いて、臨界価数ゆらぎの理論を構築した。その結果、1次の価数転移の量子臨界終点の近傍で、ほとんど運動量依存性をもたない臨界価数ゆらぎのモードが出現することを見出した。これにより、新しいタイプの量子臨界現象が出現することを明らかにした。これにより、YbRh2Si2やbeta-YbA1B4で観測されていた、非従来型の量子臨界現象が自然に説明できることを理論的に示した。本研究成果により、f電子の強い電子相関の効果が、量子臨界現象に重要な役割を果たしていることが明らかになった意義があるとともに、最近複数の物質で観測され、強相関電子系の分野で懸案となっている異常な量子臨界現象の解明にむけて、重要な成果が得られたと考えられる。
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Research Products
(11 results)