2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740242
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇田川 将文 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (80431790)
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Keywords | 重い電子系 / 遷移金属化合物 / 磁性 / 数値計算 / 多軌道系 |
Research Abstract |
近年,LiV2O4などの遷移金属化合物が示す重い電子挙動に大きな関心が寄せられている。局在スピンのようなエントロピーの担い手をあらわには持たない遷移金属化合物が重い電子挙動を示す理由についてはいまだ完全な理解が得られていない。この問題強い電子相関、軌道縮退、幾何学的フラストレーションといった物性物理における重要な課題が関係する難しい問題である。 我々は特に幾何学的フラストレーションに注目し、カゴメ格子上ハバードモデルのハーフフィリングの状態について、クラスター動的平均場理論を適用し、連続時間量子モンテカルロ法を用いた解析を行った。とりわけ、不純物クラスターサイトにおける密度行列を詳しく調べて局所的な状態の性質を理解すると共に、比熱や帯磁率といった熱力学量や一粒子スペクトルなどの動的な量の解析を通じて多角的に準粒子状態の性質を調べた。その結果、この系では金属絶縁体転移近傍の広い金属領域にわたって、低温に向けて成長する準粒子ピークが安定に存在し、またこの準粒子状態の形成が、スピン・カイラリティーモーメントの遮蔽に深く関係している事を見い出した。虚時間方向の離散化が計算時間のボトルネックであったHirsch-Fyeの方法とは対照的に、我々が用いた連続時間量子モンテカルロ法では虚時間方向の分割を数値精度を保つ範囲で任意に細かくとれるため、従来は計算が困難だった低温における比熱及びエントロピーを高精度で求めることが可能になった。その結果,電荷やスピンの揺らぎに関連する特徴的な温度より低温で比熱が鋭いピークを示し、そこで解放ざれるエントロピーがカイラリティー自由度の縮退度(log4)とほぼ一致する事を示す事が出来た。
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Research Products
(5 results)