2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740242
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇田川 将文 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (80431790)
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Keywords | 強相関系 / 遷移金属化合物 |
Research Abstract |
重い電子挙動の起源の解明のためには伝導電子と局在スピンの結合系が示す種々の物理特性を統一的に理解する事が本質的に重要である。本研究では金属パイロクロア酸化物を念頭に置いたパイロクロア格子上イジング近藤格子模型に対してクラスター動的平均場理論を適用することにより、輸送特性に焦点を当てた研究を行った。その結果、低密度領域に広く広がる2-in 2-outのスピンアイス相関が強い「スピン液体的な」領域において、低温に向かい、2-in 2-out相関の発達に伴う電気抵抗の上昇、及び抵抗極小の形成が得られた。抵抗が極小値を示す温度以下では、負の磁気抵抗が現れ、帯磁率は発散的な挙動を示す。また、比熱は抵抗極小温度より一桁以上低温にブロードなピークを示す。そして、一粒子スペクトルにコヒーレンスピークは生じないことを見出した。抵抗極小現象の標準的な理論として近藤効果が挙げられるが、我々の見出した抵抗極小現象はむしろ、スピンアイス型の特異な空間相関に電子が弾性的に散乱される事に起因し、近藤効果とは質的に異なる新しい現象を見出したものと考えられる。この「非近藤型抵抗極小現象」はスピンアイス伝導系に留まらず、幾何学的フラストレーションの強いスピン電荷結合系に広く見られる普遍的な現象と考えられる。本研究によるこの新現象の発見は重い電子の物理のみならず、幾何学的フラストレーション系一般に通用する非常に意義深いものであると考えられる。
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Research Products
(7 results)