2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740248
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 武則 東京大学, 低温センター, 助教 (80361666)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / ネルンスト効果 / 電荷秩序 / ストライプ秩序 / 量子臨界点 / 圧力効果 / 圧力下ネルンスト測定 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体においては超伝導転移温度Tcよりはるかに高温からネルンスト効果の増大が見られる。この起原としては、vortexの流れによるものであるという解釈と、電荷秩序によるフェルミ面の折り返しによるものであるという2つの解釈がある。前者では、擬ギャップ領域では、超伝導ギャップは開いているが、超伝導波動関数の位相が揃っていないと考えられ、後者では、競合する秩序が交わる点(Quantum Critical Point)の近傍で超伝導が起こるというシナリオが考えられる。本研究では、電荷秩序相のネルンスト効果に及ぼす影響を調べるために、様々にストライプ秩序の強さを制御してネルンスト効果の測定を行った。La_<2-x-y>Nd_ySr_xCUO_4はNdをドープすることによってストライプ秩序が安定化する一方、NdをドープしたLSCOに圧力をかけるとストライプ秩序が抑えられることが知られている。 Ndをドープしていくと、T_<flc>~50K以下でネルンスト電圧は劇的に減少する。これは、ストライプ秩序が安定化することによって超伝導揺らぎが抑えられるためだと考えられる。この温度は、ネルンスト効果に磁場依存性が現れる温度や、磁化率の異方性が変化し始める温度に一致しており、Tn、以下において超伝導揺らぎが発達すると考えられる。一方、我々は電荷秩序転移温度T_<flc>~75Kにおいて明らかにネルンスト電圧が増加することを見出した。このことより、T_<onset>~150K以下でのネルンスト効果の増大は、ストライプ秩序の揺らぎが発達するためであると考えられる。一方、圧力をかけることによって、キャリア濃度を変化させずに、同一サンプルでストライプ秩序が制御できる。我々は、圧力セル中でネルンスト効果を測定する装置を開発し、測定を行った。圧力を増加すると、ストライプ秩序が抑制されるために、T_<flc>~50K以下でネルンスト電圧が増加することが観測された。この結果は、Ndをドープする実験結果と全く一致しており、ネルンスト効果の増大は、電荷秩序によるものであることが確認された。これらの結果より、高温超伝導体においては、競合する秩序のQCP付近において超伝導が起きているということが示唆される。
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