2009 Fiscal Year Annual Research Report
熱伝導率による重い電子系超伝導状態における超伝導マルチギャップ効果の解明
Project/Area Number |
21740250
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
町田 洋 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (40514740)
|
Keywords | 熱伝導率 / マルチギャップ超伝導体 / 熱電係数 / 量子臨界現象 |
Research Abstract |
本研究では、熱伝導率測定による重い電子系超伝導体におけるマルチギャップ効果の解明を目的として研究を行っている。この目的を達するために本年度は、まず鉄硅化物超伝導体Lu_2Fe_3Si_5の超伝導性について、熱伝導率測定から明らかにした。Lu_2Fe_3Si_5は、マルチギャップ超伝導体であることに加えて、Feの3d電子が超伝導の発現に寄与している点が、最近注目を集めている鉄砒素系超伝導体と共通しており、大変興味深い。極低温までの熱伝導率測定の結果、マルチギャップ超伝導体の典型例であるp電子系のMgB_2とは異なり、超伝導ギャップを担う複数のバンドにおいて、有効質量がバンド毎に異なることが分かった。このことは、p電子系より比較的強い相関をもつd電子系においてマルチギャップ超伝導が実現しているためと考えられる。 さらに本研究では、重い電子系超伝導体の発現機構の解明に非常に重要となる、常伝導状態における異常な電子物性について研究を行った。特に、量子臨界性に起因したその特異な輸送現象を明らかにするため、Yb元素を含む初めての重い電子系超伝導体であり、量子臨界点近傍に位置すると考えられているYbAlB_4の極低温までの熱電係数測定を行った。その結果、得られた熱電係数はフェルミ液体的挙動を示す通常の金属とは異なり、低温に向かって非常に大きな値をとることが分かった。また、熱電係数の振る舞いは同様に量子臨界点近傍に位置すると考えられるCeCoIn_5のそれとも大きく異なることが分かった。 以上の結果は日本物理学会で口頭発表を行った。
|