2009 Fiscal Year Annual Research Report
高感度の磁場角度分解比熱測定による擬一次元超伝導状態の解明
Project/Area Number |
21740253
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米澤 進吾 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 助教 (30523584)
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Keywords | 擬一次元超伝導 / 磁場角度分解比熱 / (TMTSF)2ClO4 / スピン1重項超伝導 / 超伝導ギャップ / ラインノード / 超伝導揺らぎ |
Research Abstract |
本研究課題では擬一次元超伝導体(TMTSF)_2ClO_4の磁場角度分解比熱測定を通じて、超伝導対称性やギャップ構造、および高磁場超伝導状態の正体を解明することを目指している。本年度は磁場方向を3次元的に精密制御しながら微小熱容量を測定する装置を完成させ、(TMTSF)_2ClO_4単結晶の熱容量の温度および磁場強度・方向依存性の測定を行った。その結果、以下の点が明らかになった。 (1) 比熱のゼロ磁場での温度依存性及び導電面に垂直な磁場中での磁場依存性から、(TMTSF)_2ClO_4の超伝導ギャップにはラインノードが存在する可能性が高いことを示した。 (2) 導電面に平行な磁場中での比熱の磁場依存性や上部臨界磁場の温度依存性から、(TMTSF)_2ClO_4がスピン1重項の超伝導体であることを示した。 (3) これまでの電気抵抗による研究により2.5テスラ以上の磁場中でも超伝導の寄与が存在していることが明らかになっていたが、比熱ではこのような高磁場中では異常は見られなかった。従って、高磁場の超伝導は長距離秩序化していないこと明らかになった。この領域では低次元性に起因する超伝導揺らぎが支配的である可能性が考えられる。 これらの成果はTMTSF系の超伝導の発見から30年間も未解決であった超伝導状態に関する基本情報をついに解明した重要なものであると考えている。 さらに、現在継続して比熱の面内方向依存性を測定しており、ギャップ構造の詳細な特定を目指している。
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Research Products
(8 results)