2009 Fiscal Year Annual Research Report
エピタキシャル薄膜を用いた鉄系高温超伝導機構の解明
Project/Area Number |
21740254
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠原 成 Kyoto University, 低温物質科学研究センター, 研究員(研究機関) (10425556)
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Keywords | 強相関電子系 / 低温物性 / 物性実験 / 超伝導物性(その他) |
Research Abstract |
エピタキシャル成長した超伝導薄膜は、時に微小な単結晶しか得ることが出来ない化合物も大型試料の作製を可能とし、トンネル接合の作製によって超伝導秩序関数に関する重要な知見が得られ、又、単結晶基板との間に生じる格子不整合歪みにより、バルク結晶では得ることができない結晶格子の制御が期待できる。バルク結晶にはない特徴を数多く持つエピタキシャル薄膜は極めて重要な試料形態である。鉄砒素化合物を中心とした新たな高温超伝導物質群は、最高55Kに至る転移温度の高さと、エキゾチックな物理から多くの注目を集め、世界的な研究競争時代が続いている。しかし、エピタキシャル薄膜の作製とこれを用いた物性研究については未だ数は少なく、その発展が望まれるのが現状である。本研究では、上記のような薄膜試料に固有な特徴を生かした物性研究によりこの系の機構に迫ることを目的とし、エピタキシャル薄膜の作製、及びこれと相補的な純良単結晶試料の育成、精密物性測定を行った。これまでの研究で ・ KrFエキシマレーザーを用いたPLDにより、電子ドープ型の鉄系超伝導体Ba(Fe_<1-x>Co_x)_2As_2のエピタキシャル薄膜を作製。最適置換の超伝導薄膜を得ることに成功。 ・ 等原子価ドープによる鉄系超伝導体BaFe_2(AS_<1-x>P_x)_2の純良単結晶育成に成功。系統的輸送現象測定、及び、広い置換域に及ぶ磁気量子振動の観測により、非フェルミ液体的振る舞い、多体相互作用の重要性、量子臨界性を報告。超伝導秩序関数がラインノードを持ち、この系の超伝導が非従来型であることを明示。 ・ ペロブスカイト型絶縁層をもつ鉄系超伝導体Sr_4V_2O_6Fe_2As_2の多結晶、及び微小単結晶の作製に成功。 の成果を収めた。特に今後、BaFe_2(As_<1-x>P_x)_2について、エピタキシャル薄膜と超伝導接合の作製により、ノード構造をもつこの系の超伝導対称性が解明されると期待できる。
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Research Products
(25 results)