2010 Fiscal Year Annual Research Report
β-パイロクロア酸化物におけるアルカリ金属元素の振動の電子状態への影響の解明
Project/Area Number |
21740257
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長谷川 巧 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (20508171)
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Keywords | 強相関電子系 / ラットリング / パイロクロア酸化物 / ラマン分光 / 非調和相互作用 / 格子振動 |
Research Abstract |
前年度の研究により、アルカリ金属原子の非調和振動ではイオン半径の変化により大きく変化するのは調和項であって非調和項は余り変化しないことが分かった。本年度はこれをふまえて非調和振動の分散関係、他の化合物の非調和振動について研究を行い、主な成果として以下の2つを得た。 1.β-パイロクロア酸化物AOs_2O_6(A=K,Rb,Cs)のアルカリ金属原子の振動の調和項と非調和項について、平均場近似を用いてその見積もりをより正確にし、分散関係を評価した。その結果、調和項がほぼ0であるKでだけ、数cm-1から60cm-1にわたる非常に大きな分散が現れることが分かった。低エネルギー振動では非調和項が支配しているため、大きな温度変化が期待される。これは中性子非弾性散乱スペクトルの大きな温度変化を説明しうる。分散関係の温度変化を評価することは今後の課題である。 2.当初の計画にはない研究だが、大振幅振動の存在する他の化合物(クラスレート・スクッテルダイト等)について、第一原理計算を用いて大振幅振動の調和項のイオン半径依存性を求めた。調和項が僅かに負にイオン半径で振動の振幅は最大になり、物性に大きな影響が現れると予想される。スクッテルダイト化合物R^<3+>Os_4Sb_<12>では大振幅振動による異常物性はPr^<3+>、Sm^<3+>で議論されているが、調和項が負になるのはPr^<3+>とNd^<3+>の間であることを示した。クラスレート化合物における計算結果は、クラスレート化合物における大振幅振動と熱伝導度の関係の議論に用いられた。
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