2009 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴と誘電率測定によるカーボンナノチューブ内に吸蔵した水の構造と挙動の研究
Project/Area Number |
21740262
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松田 和之 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 助教 (60347268)
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Keywords | ナノチューブ・フラーレン / 分子性固体 / 物性実験 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
ナノスケールの空間内の水はバルク状態とは異なる特異な挙動を示す。本研究では単層カーボンナノチューブ(SWCNT)内部の1次元的空間に吸着した水の挙動を^1H,^2H核磁気共鳴(NMR)とx線回折実験により系統的に調べた。その結果、実験に用いた平均直径範囲1.1nm<D<2.4nmのSWCNT試料全てについて、高温領域では水分子はNMRの時間スケール(~10μs)より十分速い並進・回転運動をしており、水は液体的であることが確認された。さらに、直径の小さなSWCNT(1.1nm<D<1.5nm)内部の水は液体-固体相転移を起こし、低温で水分子が水素結合で繋がったリング(5,6,7,8員環)が一次元的に積層したアイスナノチューブが形成されるのに対し、直径の大きなSWCNT(1.5nm<D<2.4nm)ではアイスナノチューブは形成されないことがわかった。また、1.5nm<D<2.4nmのSWCNTでは低温でチューブ内部の水分子がチューブから放出されるwet-dry転移が起きることを見出した。アイスナノチューブの融点は直径が大きくなるに従い融点は降下するのに対し、wet-dry転移温度は逆の直径依存性を示し、既に報告されているバルク領域(D>~2nm)の円筒空洞内の氷の融点の直径依存性に近いことがわかった。また、アイスナノチューブの誘電特性を古典分子動力学に基づく計算機シミュレーションにより調べ、偶数(6,8)員環、奇数(5,7)員環のアイスナノチューブがそれぞれ強誘電体、反強誘電体であることを予測した。
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