2009 Fiscal Year Annual Research Report
異常超伝導を示す擬一次元有機導体の高圧力下におけるスピンと電荷の秩序
Project/Area Number |
21740263
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
糸井 充穂 Aoyama Gakuin University, 理工学部, 助教 (40422448)
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Keywords | 分子性固体 / 有機導体 |
Research Abstract |
近年、我々は(TMTTF)_2SbF_6(基底状態:電荷秩序転移温度T_<CO>=154K,反強磁性転移(AF)T_N=8K)の超伝導相を確認し(T_C=2.7K@6GPa)、過去に報告されたTM系の圧力相図を基に、(TMTCF)_2Xの最終圧力相図を提案した。この圧力相図では、(TMTTF)_2SbF_6の反強磁性相が消失した後(TMTTF)_2PF_6および(TMTTF)_2AsF_6の常圧下基底状態にあたるスピンパイエルス相が圧力下で存在する事が予想されている。(TMTTF)_2SbF_6の低圧力下のスピン状態の変化は、過去に圧力下NMRにより調べられ、反強磁性転移温度および電荷秩序転移温度が圧力によって抑えられる事が報告されている。しかし、スピンパイエルス相の存在および圧力下のスピン状態をより明確にするには圧力下NMRの他に更なる測定が必要である。そこで本研究では、この物質における圧力下基底状態の変化を磁化率をはじめとする測定法から検証し、圧力下におけるスピンと電荷の秩序を明らかにすることを目的としている。 本年度は、(TMTTF)_2SbF_6の圧力下のスピン変化をDC磁化率測定から割り出すため、圧力下磁化率測定を試みた。(TMTTF)_2SbF_6の磁化は大変小さく、バックグラウンドの大きい圧力セルを用いた測定は困難を極めたが、測定法の改良を重ねた結果、0.4GPaまでの磁化率測定を行うことが出来た。(TMTTF)_2SbF_6の磁化は、高温側では一次元反強磁性の特徴的な挙動を示し、低温約8Kで最小値を示した後、急激に上昇した。圧力下では、反強磁性転転移温度(磁化率の極小)が、圧力印加とともに低温側に抑制された。実験から得られた圧力温度相図は、圧力下NMRと非常に良い一致を示した。来年度は、0.4GPa以上の圧力を発生させる為の圧力セルの開発を行い、更なる圧力下での磁化挙動から(TMTTF)_2SbF_6高圧力下スピン状態の解明を目指す。
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