2011 Fiscal Year Annual Research Report
2次元ヘリウム4固体における零点空格子とその超流動状態
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21740264
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
柴山 義行 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (20327688)
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Keywords | 量子固体 / 2次元ヘリウム4 / 固体の超流動 / 非古典的回転慣性 / ねじれ振り子 / ボース凝縮 |
Research Abstract |
液体ヘリウム4(^4He)は非常に量子性の強い物質であり,極低温において超流動を示すことが良く知られている.このような強い量子性は固体^4Heでも観測され,しばしば量子固体と呼ばれる.1969年,その強い量子性のため固体^4Heに零点空格子が生成し,それが極低温でBose凝縮(BEC)を起こすという『固体の超流動』の可能性が理論的に指摘されたが,これまで実験的には観測されてこなかった.2004年に初めて固体の超流動の存在を強く示唆する実験結果が報告されたが,その後の研究から,この現象は零点空格子のBECではなく,固体4^He結晶の格子欠陥等に起因するものと解釈されている.一方2005年,グラファイト表面上の2次元^3He固体において,ある特定の面密度(17-19atoms/nm^2)で零点空格子の運動に起因する特異な量子相が発見された.同様の系を^4Heで構築することでこの零点空格子がBECを起こし2次元^4He固体において固体の超流動が実現すると期待される.これまでねじれ振り子法を用いた測定で,2次元4^He固体においても固体の超流動に起因すると考えられる有限の非古典的回転慣性(NCRI)を観測した.本研究では,このNCRIの臨界速度の測定,ヒステリシス現象の測定を行いバルク固体4^Heと比較することで,2次元Bose粒子系における固体の超流動について調べることを目的とした.面密度18.39atoms/nm^2の試料に対し,有限のNCRIが出現する65mKとNCRIの現れない700mKにおいて,ねじれ振子の共振周波数の振動速度v_<osc>依存性及びその履歴に対する効果を調べた.振動速度を5000μm/s以上まで増加させた後減少させたところ,65mKでの測定では1100μm/s以下で共振周波数にヒステリシスが現れ,v_<osc>の増加時よりも0,06~0.08mHz低い値をとる.このヒステリシスの大きさは,この試料のNCRIの50%にあたる.一方NCRIの現れない700mKでは,v_<osc>の増減に対し共振周波数には有意なヒステリシスは観測されなかった.このことは,65mKで観測された<osc>に対するfのヒステリシスは,低温で現れるNCRIの振動速度依存性を反映していると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年10月頃から実験装置(希釈冷凍機)が不調になり,必要な測定の一部を行えなかったため.
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Strategy for Future Research Activity |
まだ実験装置(希釈冷凍機)が本調子ではないので原因を解明し,改善を行う.また,論文化に際しグラファイト基板の表面積に見積り不確かさがあることが判明したので,上記の改善と平行で基板表面積の測定を行う.
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Research Products
(6 results)