2011 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレーションを持つ光格子中のボース原子気体の新奇量子相の解明
Project/Area Number |
21740267
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
笠松 健一 近畿大学, 理工学部, 講師 (70413763)
|
Keywords | ボースアインシュタイン凝縮 / 超流動 / 冷却原子 / 光格子 / 量子渦 / 相転移 / フラストレーション |
Research Abstract |
冷却原子気体系においてフラストレーションによりもたらされる新たな量子相の発見とその動的な現象に関して研究を進めている。本年度は以下の内容を明らかにした。 1, 2成分ボースアインシュタイン凝縮体に存在する2つの半量子化渦の間の相互作用に関して,その解析解の漸近形を導出した。通常の1成分の量子渦間に働く力はその相対距離をRとすると,R^<-1>に比例するが,2成分の場合は1n R/R^3のように変化する事を明らかにした。 2,回転する光格子によって生じる量子渦の形成のダイナミクスを、Gross-Pitaevskii方程式の数値計算によって明らかにした。これに関して,Oxford大学の実験結果と詳細な比較検討を行った。結果,実験で観測された平衡状態の渦数の回転振動数依存性は,光格子を作るレーザービーム強度のガウス分布が大きな影響を与えている事が明らかになった。また,最初に渦ができる臨界回転振動数は実験と矛盾しており,今後の課題としてこれを説明する新しいモデルを検討する必要がある事が分かった。 3,有効磁場中の光格子ポテンシャルに閉じ込められたハードコアボソンの基底状態の相図をCP1模型のモンテカルロシミュレーションにより調べた。この模型は各サイトの粒子数の揺らぎを取り入れることができ,以前から解析されているフラストレーションをもつXY模型をより現実的に近づけた模型といえる。今年度は有限温度における相図の磁場強度依存性を調べた。結果、粒子数揺らぎの効果は小さく、有限温度の相転移の性質は、そのユニバーサリティクラスを含めて位相のみを考慮したXY模型の性質に従う事を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度で、有限温度領域における有効磁場下の格子ボソン系の相図が得られ、それを論文として発表した事により、本研究課題の目的としてはおおむね達成できたものと評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は磁場下の格子ボソン系のダイナミクスの問題に取り組みたいと考えている。平均場近似の下では動的なグッツヴィラー近似を用いた解析が取り組みやすいため、これを出発点にして量子効果を取り入れた定式化を考えたい。また相図に関しては量子揺らぎを無視した定式化で議論しており、この効果を取り入れた議論に拡張させたい。
|
Research Products
(9 results)