2009 Fiscal Year Annual Research Report
密度行列繰り込み群法による強相関電子系の緩和ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
21740268
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Research Institution | 仙台高等専門学校 |
Principal Investigator |
松枝 宏明 仙台高等専門学校, 総合科学系, 准教授 (20396518)
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Keywords | 強相関電子系 / 非平衡状態・時間発展 / 光誘起相転移 / 緩和ダイナミクス / スピン・電荷の結合・分離 / 密度行列繰り込み群・DMRG / テンソル積変分法 |
Research Abstract |
本研究課題は,強相関電子系の光励起状態・非平衡状態・光誘起相転移の解明という学術的・基礎的問題意識に立脚して,次世代強相関オプトエレクトロニクスの一端を担うものである.交付申請書では,以下の三点を研究の主眼に置いている: (1)一次元モット絶縁体における超高速緩和過程の解明 (2)多軌道系における光誘起スピンダイナミクスと角運動量保存則 (3)擬二次元系における時間発展DMRG法の開発 本年度は,(2)に関連した研究成果が論文として公表され,そのうち一つは米国物理学誌Physical Review Letterに掲載された.この研究では,磁性と伝導性に関して異なる電子相が拮抗するペロブスカイト型マンガン酸化物の光応答が明らかにされ,特に,反強磁性絶縁相へのパルス光励起直後で起こるスピン・電荷自由度の強い結合が,その後の緩和過程で分離する傾向が詳細に研究された.この研究から,ポンプ・プローブ分光が,平衡状態での実験にない情報を含んでいることが見出された.またマンガン系の結果を受けて,スピン状態自由度のあるコバルト系の理論研究も進展中である.これにより,マンガン系・銅酸化物等の無機物と,スピン状態転移のある有機のスピンクロスオーバー錯体とを包括的に結びつける方法論・概念が見出される可能性がある. (1)に関しては,半導体と強相関電子系における電荷・フォノン結合の本質的違いが見出され,それが緩和ダイナミクスヘ大きく影響することが明らかとなった.強相関効果と緩和過程を精密に取り扱って超高速緩和の起源を明らかにした研究はこれまでになく,現在論文を執筆中であり,次年度詳細な研究に発展させる予定である.また(3)に関しては,DMRG深く関連した方法論であるテンソル積変分法を開発中である.日本物理学誌に依頼され,テンソル積変分法の最近の話題に関する解説記事を執筆した.
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Research Products
(8 results)