2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規分子性導体及び遷移金属酸化物の有効モデル化とその解析による相転移現象の解明
Project/Area Number |
21740270
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
妹尾 仁嗣 The Institute of Physical and Chemical Research, 古崎物性理論研究室, 研究員 (30415054)
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Keywords | 物性理論 / 分子性導体 / 遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
本年度は、1.遷移金属酸化物ss-Na_1/3V_2O_5およびss-Sr_1/3V_2O_5に関する有効モデル構築、2.単一成分分子性導体Cu(tmdt)_2の有効モデル構築、3.鉄フタロシアニン錯体TTP[FePc(CN)_2]_2の有効モデルに対する数値的解析、の3点について研究を行った。 1.ss-Na_1/3V_2O_5およびss-Sr_1/3V_2O_5に対する第一原理計算による電子バンド構造を基に、フェルミ面近傍の強束縛フィッティングによる有効モデル構築を行った。その際、NaおよびSrの陽イオンサイトが秩序-無秩序転移を起こすことを考慮し、両者の場合についてのモデルと構築した。その結果、結合ラダー系であることを確認し、無秩序相に対して電荷スピン秩序の平均場近似による解析を行い実験で得られている結果を説明した。 2.近年合成に成功した単一成分分子性導体系のうち、新規物質であるCu(tmdt)_2に対して、第一原理計算による電子バンドを基にフェルミ面近傍の強束縛モデルのパラメータを決定した。以前同型の物質において得られた、π電子とpd混成軌道による多バンド描像を適用できることを示し、これらの物質系の系統的な電子状態の整理ができた。 3.巨大磁気抵抗効果が観測されることで注目を集めている分子性導体TTP[FePc(CN)_2]_2の有効モデルとして、1次元伝導電子を表す拡張ハバードモデルと、同じ分子内にある局在スピンを表すイジングスピン鎖とが結合したモデルを取り扱った。モンテカルロシミュレーションを行った結果、局在スピンが反強磁性相関を持つ時には伝導電子鎖における電荷秩序相関が著しく発達し、またこれに外部磁場を印加した際に両者が協調的に不安定化することを見出し、実験結果を説明した。
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