2011 Fiscal Year Annual Research Report
パイロクロア磁性体における量子スピンアイス、近藤効果と異常ホール効果の理論
Project/Area Number |
21740275
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小野田 繁樹 独立行政法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 専任研究員 (70455335)
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Keywords | 強相関電子系 / 磁性 / スピンアイス / 異常ホール効果 / トポロジー / ゲージ理論 / ヒッグス転移 |
Research Abstract |
パイロクロア格子磁性体Pr_2M_2O_7(M:遷移金属)では、20K付近での近藤効果や、1.5K以下でのカイラルスピン液体相の出現など、非自明な現象が観測されている。これらの現象には、極低温でのPr磁気モーメントの量子性が根底にあると考えられている。本研究では、その量子性の起源、および、これがもたらす効果を、理論的に解明した。特に、パイロクロア格子系局在磁性体(M=Sn,Zr)に対しては、半微視的計算から、古典スピンアイスの巨視的に縮退した基底状態が量子力学的相互作用によって解けること、さらに、U(1)量子スピン液体と呼ばれる新しい物質状態が生じることを平均場理論から示した。このU(1)スピン液体状態は、磁化の単極子を運び、閉じ込めから解放されたスピノン準粒子と、これと結合した仮想光子励起をもった、仮想量子電磁気学によって特徴づけられる。さらに、希土類イオンをPrからYb,Er,Ndに置換した系に対しても同様の理論を構築した。Yb系では、高温におけるU(1)スピン液体から、低温における強磁性体に1次相転移すること、この相転移がスピノンを物質波としたU(1)ゲージ理論におけるHiggs転移として記述されることを提唱した。 また、強いスピン軌道相互作用をもった伝導電子を有するIr系パイロクロア格子磁性体R_2Ir_2O_7(R:希土類元素)の第一原理バンド計算結果から、Wannier関数を通じて導出した有効ハバード模型に対して平均場理論を構築し、これまで知られていた常磁性金属相、Weyl半金属相、反強磁性金属・絶縁体相のほか、一様磁化とこれと関連したU(1)トポロジー、ないし、ベリー位相を有する絶縁体相が存在することを示した。この相では量子異常ホール効果が生じる。また、実験的に観測されている希土類元素Rの置換による金属絶縁体転移を定性的に理論的に再現した。
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Research Products
(12 results)