2009 Fiscal Year Annual Research Report
密度行列繰り込み群法の拡張による2次元量子多体系の解析
Project/Area Number |
21740277
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
引原 俊哉 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 准教授 (00373358)
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Keywords | 密度行列繰り込み群法 / 量子多体系 / 量子スピン系 / 強相関電子系 / エンタングルメント繰り込み |
Research Abstract |
本年度の研究では、Multi-scale Entanglement Renormalisation Ansatz(MERA)法のアルゴリズム開発を行った。自身で作成したソースコードを用いて、いくつかの格子上の小規模量子スピン系に対する数値計算を実施することで、MERA法で採用されている変分波動関数(MERAネットワーク)が、密度行列繰り込み群(DMRG)法で用いられている行列積型波動関数に比べ、少ない状態数で格段に精度よく、系の基底状態波動関数を再現できることを確かめた。しかし、実際の変分計算を行うには、波動関数の最適化を行う計算の安定的な実行が難しいため、量子アニーリング等の手法を援用した新たな最適化アルゴリズムの開発に取り組み、現在もその改良を行っている。 また、本研究課題の研究対象である、2次元フラストレート量子スピン系の関連モデルである、フラストレート量子スピン梯子系に対する研究も行った。具体的なモデルとしては、2次元J1-J2モデルの一部を切り取った系に対応する、対角スピン間交換相互作用を含んだ2本鎖梯子系についての研究を行い、この系では、これまでに知られていたrung-singlet相、Haldane相の間に、新奇な中間相として、並進対称性が自発的に破れたColumnar-dimer相が実現されることを明らかにした。本結果は2次元J1-J2モデルにおける新奇量子液体相の出現を示唆するものであり、現在、この結果を基点として、2本鎖梯子系から2次元系への格子形状変化に伴う特性変化を追跡することで、2次元系の特性解明を目指した研究を行っている。
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