2010 Fiscal Year Annual Research Report
確率的カットオフ法による、微小磁性体における熱揺らぎ耐性の解明
Project/Area Number |
21740279
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 志剛 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (80400282)
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Keywords | ナノ磁性体 / 熱的安定性 / 確率的カットオフ法 / 幾何学的閉じ込め磁壁 / 長距離相互作用系 / モンテカルロ法 / アルゴリズム / 統計力学 |
Research Abstract |
最初に、本研究課題において申請者は、磁性体の熱的安定性を定量的に評価する手法を開発したのだが、本手法を国際学会「Statphys24」において発表し(11.「研究発表」における第1学会発表)、さらに論文への投稿を行った。論文に関しては現在投稿中である。磁性体の熱的安定性は微細化と共に減少する傾向があるため、磁性体の微細化が進められている今日、熱的安定性の定量的評価を可能とする本研究の意義は大きいと言える。 次に、上述の方法において用いている、Stochastic Potential Switchingアルゴリズムの再形式化と改良を行った(「11.研究発表」における第1論文)。その結果、長距離相互作用系において、熱平均エネルギーと比熱の測定、及びレプリカ交換モンテカルロ法との併用を効率的に行うことが可能となった。熱平均エネルギーと比熱は物理における主要な測定量であること、レプリカ交換モンテカルロ法との併用により熱平衡状態への緩和が格段に促進されること、及び本手法は長距離相互作用系全般で使える汎用性の高いものであることから、本研究の結果は極めて重要であると言える。 さらに、これらの手法の適用研究として、前年度に引き続き、ナノコンタクトに閉じ込められた厚さ数ナノの磁壁(幾何学的閉じ込め磁壁)の熱的安定性に関する研究を行った。そして、磁壁の熱的安定性と磁気抵抗の熱ノイズが、磁壁の捻り角にどのように依存するかを明らかにした(11.「研究発表」における第3学会発表)。さらに、スピン偏極電流によって駆動される磁壁ダイナミクスの捻り角依存性に関する研究も行った(11.「研究発表」における第2論文)。本研究で得られた知見は、幾何学的閉じ込め磁壁を磁気ヘッドやマイクロ波発信素子として応用する際に大きな役割を果たすものと考えられる。
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