2011 Fiscal Year Annual Research Report
確率的レーブナー方程式および共形場理論を用いた2次元臨界確率過程の研究
Project/Area Number |
21740285
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堺 和光 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (10397028)
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Keywords | 確率的レーブナー方程式 / SLE / 確率過程 / 共形場理論 / Wess-Zumino-Witten模型 / 可積分系 / 厳密解 / ベーテ仮説 |
Research Abstract |
本年度は、確率的レーブナー発展(SLE)に内部自由度を付随させ、その拡張されたSLEによって記述される曲線が複数存在する、「多重SLE」の定式化を行った。 一般に臨界点における物理系では、並進・回転・スケール変換といった、共形変換に対する不変性を有することが知られている。こうした臨界点上の系には特徴的な幾何構造があらわれる。例えば、強磁性体の模型であるイジング模型の上向きと下向きのスピンがなす境界線や、アンダーソン転移における電子分布などは、典型的なフラクタル曲線をなす。最近、2次元において、これらの曲線が確率的レーブナー発展(SLE)とよばれる微分方程式で表されることがわかってきた。他方で、2次元臨界現象を分類する理論として共形場理論(CFT)があり、可解模型の存在も無数に知られている。この10年の間に、これらSLEとCFTとの対応関係や、関連する統計力学模型の研究が活発に行われ、現在、SLEは臨界現象の幾何的側面を記述する方程式として急速な理解が進んでいる。 ところが、これまでのところ、主としてミニマル模型と呼ばれるCFTとSLEの対応が理解されているのみであった。最近、Alekseevらや我々の研究によって、SLEに内部自由度を付加させる拡張を行うことにより、非ミニマル模型のひとつであるWess-Zumino-Witten模型に対応するSLEを定式化することに成功している。我々は、さらにこの研究を掘り下げ、複数の相互作用するSLEから構成される多重SLEの定式化に成功した。この方程式は、従来のSLEを含む、より一般化されたものであり、この研究を基礎として、より広い枠組みで臨界現象の幾何的側面の研究を行うことできるようになると考える。この研究は現在論文を執筆中である。 上記の研究の他、1次元の非対称単純排他過程と呼ばれる確率過程のダイナミクスの研究も行った。
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Research Products
(7 results)