2009 Fiscal Year Annual Research Report
非定常乱流「レイリー・テイラー乱流」の時空間スケーリング則
Project/Area Number |
21740290
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 剛 京都大学, 理学研究科, 助教 (20346076)
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Keywords | 乱流の統計理論 |
Research Abstract |
レイリー・テイラー乱流(Rayleigh-Taylor turbulence、以下RT乱流)とは、重力の影響下で上に重い流体を置き、下に軽い流体を置いたのちに発達する乱流で、日常にありふれた機構でおこされる乱流である。しかし、RT乱流は時間とともに大きく変化する非定常性と、重力という空間的非等方性が特徴である。この特徴は標準的な乱流理論の枠組を越えるもので、RT乱流の理解を通じてこの突破を目指す。特に本研究では、上下流体の密度差が小さくない場合(アトウッド数0.5)のRT乱流の時空間スケーリング則の数値解析を主眼とする。スケーリング則に注目したRT乱流の先行研究では上下流体の密度差が小さい場合を対象として、その場合に成立するブシネスク近似方程式系を扱うものが殆どである。現実に生じているRT乱流は、この仮定が常に満足されているわけではない。 そこで、本研究ではこの近似を使わずに、可混合非圧縮密度変動乱流の枠組を用いて数値シミュレーションのプログラムを作成した。ここでは、上部流体の密度が下部の2倍に相当する系についての大規模数値シミュレーションを大阪大学のスーパーコンピュータSX-9を用いてを行い、RT乱流の時空間スケーリング則を同定した。本研究では、このRT乱流のスケーリング則がブシネスク近似をもちいた低密度差の場合とは異なることが観測された。これは、高密度差二流体の混合(RT乱流もその一形態)についての最近の先行研究とも同様である。この場合のRT乱流場では非等方性が持続され、統計量は強くこの影響を受ける。特に2地点間の密度と速度の差のモーメント量の時空間スケーリング指数が従来予想とは異なる値となった。低次モーメント量からの解釈は、標準乱流理論によるスケーリング則(コルモゴロフ則)と成層乱流で予想されているスケーリング則(ボルジャーノ・オブコフ則)の混在である。この混在の詳細、および高次モーメントの異常スケーリングは従来とは異なる知見を与え、熱対流や混合層乱流などの他系への応用も考えられる。
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Research Products
(2 results)