2011 Fiscal Year Annual Research Report
磁気多極子秩序相及びスピン液体相の理論的特徴付けと実験検出方法の提案
Project/Area Number |
21740295
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 正寛 青山学院大学, 理工学部, 助教 (90425570)
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Keywords | 物性基礎論 / 磁性 / 磁気多極子秩序 / ネマティック相 / スピン密度波相 / ラマン散乱 / 厳密解 / フラストレーション |
Research Abstract |
本研究課題の目標として「スピン演算子の積などで定義される検出困難な秩序状態を効果的に特徴付ける方法の提案」「そのような多スピン秩序が実現する現実的な系の提案」が挙げられる。今年度、この目標と関連し1,空間異方的磁性体における磁場誘起ネマティック相、2,量子スピン鎖のラマン散乱、3,スピンチューブ模型の磁化プラトー領域における新しい相、の3つの研究において成果を得ている。以下1,2についてまとめる。 1,近年、一連の擬1次元銅酸化物フラストレート磁性体(LiCuVO4など)が、マルチフェロイクスとして、または新しい多極子秩序相を示す舞台として、注目を集めている。これらは全て最近接強磁性結合J1と次近接反強磁性結合J2を持つJ1-J2スピン鎖構造を有しており、J1-J2鎖はこれら磁性体を記述するミニマル模型と考えられている。我々は、磁場中のJ1-J2スピン鎖に対する有効理論に基づいた場の理論と数値計算の戦略を融合し、弱い3次元結合を加えたJ1-J2鎖結合系の温度磁場相図を完成させた。鎖間結合の種類に依存しながら低磁場領域でスピン密度波相が、高磁場側でネマティック(4極子)相が現れることを定量的に明らかにした。 2,ラマン散乱は、磁性体のダイナミクスを調べる強力な方法の1つである。磁気秩序状態におけるラマン散乱の理論は20世紀に確立しており、2マグノン励起が観測されることが知られている。一方1次元磁性体では,秩序相の代わりにスピン液体がしばしば現れ、そこではマグノンの代りにスピノンやその束縛状態が低エネルギー励起を支配する。このような量子状態に対するラマン散乱の理論は発展途上にあったが、我々は場の理論、厳密解、数値解析の方法を組み合わせることで1次元磁性体のラマン散乱スペクトルを定量的に評価し、磁性体の空間構造や相互作用の種類とスペクトルの関係を明らかにした。
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Research Products
(11 results)