2010 Fiscal Year Annual Research Report
革新的電子ビーム性能を実現する超格子フォトカソードの研究
Project/Area Number |
21740305
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西谷 智博 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 協力研究員 (40391320)
|
Keywords | フォトカソード / 高輝度電子源 / スピン偏極電子源 / 負電子親和力表面 / 超格子半導体 / ガリウムヒ素半導体 / 長寿命化 |
Research Abstract |
フォトカソード電子源は、次世代線形加速器「国際リニアコライダー」における実用偏極電子源だけでなく、次世代放射光源加速器の高輝度電子源としても期待されている。一方、半導体デバイスの微細化や機能材料高度化には、既存のナノテクノロジーを超える原子レベルでの詳細な構造解析や元素分析、構造内の電磁界分布評価が可能な次世代電子顕微鏡が不可欠であり、電子源の高性能化がその実現の鍵となっている。このような次世代技術を実現する電子源として、輝度とスピン偏極性能に利点を持つ半導体フォトカソードは要求性能に応える可能性を持つ。本研究では、フォトカソードの高輝度性能化と高耐久化の独自アイデアとして提案している超格子半導体の最適結晶構造を追求し、放出電子の極小エネルギー幅と大電流引出しによる高輝度性能の実証を目的としている。 本研究において、既に高耐久化に成功しているAlGaAs半導体フォトカソードに着目し、AlGaAsとGaAs半導体の組合せを用いた超格子構造について有効質量近似のクローニヒ・ペニーモデルによるバンド理論計算を行い、高輝度化のみならずスピン偏極した電子生成が可能であることを見出した。この理論計算から設計した結晶構造を持つAlGaAs-GaAs超格子半導体フォトカソードを開発し、量子効率の励起エネルギー依存性の測定により量子閉じ込め効果の観測に成功し、電子源の超高輝度化の必要条件である電子の運動量分散の極小化が超格子半導体により可能であると実証した。更に、これまでに半導体と共に開発を進めてきた30keVフォトカソード電子銃へこの超格子半導体フォトカソードを搭載し、電子励起用パルスレーザーのパルス時間構造に応答したナノ秒の短パルスの電子ビーム生成とビームプロファイル観測に成功した。
|
Research Products
(4 results)