2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740308
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 博司 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00514564)
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Keywords | ソフトマター物理 / 生物物理 / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究者はこれまでに、膜の曲げ弾性と膜端の線張力を独立に広範囲で変えられるメッシュレス膜模型を構築している。このメッシュレス模型を用いて、膜の曲げ弾性を正確に測定する方法を研究した。本研究において、この模型を用いて、生体膜の曲げ弾性を測定する計算法について研究した。複数の手法を比較したが、従来の平面膜のゆらぎから求める方法に補正を加えることでもっとも高い精度を得ることができることを明らかにした。また、平面膜を押し縮めるとバックリッグ(座屈)が起こるが、この座屈した膜の界面張力に異方性があり、その大きさは、楕円関数を用いて数理的に解析的に計算できることを見つけた。この関係を用いても、曲げ弾性を求めることが可能である。他の手法で求めた値と測定誤差の範囲内で一致する。 また、溶媒を陽に含まない粗視化分子模型を発展させ、膜の曲げ弾性と単分子膜の自発曲率などを自由に変化させられる新しい脂質分子模型を構築した。これまで、多くの研究者によって多数の粗視化脂質分子模型が提案されてきたが、パラメータのチューニングは原子スケールの分子シミュレーションに平均の座標位置を合わせるか、膜の曲げ弾性、面積圧縮率を脂質膜の典型的な値に合わせるかしか行われていなかった。研究者間のシミュレーション結果に不一致が見られることがあるが、それが物理的な条件の違いから来るのか、脂質膜のモデル依存性から来るのか、はっきりしないことが多い。両親媒性分子の性質を広範囲で変えることのできるこの新しい分子模型を用いることで、より定量的に脂質膜を扱うことができるようになる。この模型を、洗剤によるベシクルの溶解など多様な現象へ適応することで、新しい知見を生むことが期待される。
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