2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740309
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古川 亮 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (20508139)
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Keywords | ガラス / 過冷却液体 / レオロジー / ソフトマター |
Research Abstract |
過冷却液体に普遍的な動的不均一性の存在は、過冷却液体やガラスが協同運動の問題であるという側面を強調する。協同運動が物性を能動的に支配するソフトマターにおいては、動的ないし静的な協同運動のスケールが存在し、その結果としてマクロな輸送異常、非線形輸送が観測されることは本質的であった。本研究計画では、このような[協同性とメソスコピック輸送]という観点から過冷却液体やガラス状物質の輸送現象における空間スケール依存性、時空階層性について研究を進めてきた。本年度は初年度における粘性係数の波数依存性の研究によって得られた知見をさらに推し進めて、以下のような成果を得た。(i)3次元分子動力学シミュレーションによって得られた複素弾性率の波数依存性の詳細な解析により、メソスケールに展開する粒子の配置換えと粘弾性緩和が直接的な関連を持つ証左を得た。(ii)粘弾性応答を、波数依存の緩和時間とプラトー弾性率に分解することによって、構造緩和のメソスコピックな性質はストレス自体の空間相関(静的特性)ではなく、緩和イベントの空間相関(動的特性)に由来することを明らかにした。これらはメソスケールに展開する動的な協同性が輸送に本質的な寄与をもたらすことを強く示唆する。従来のモード結合理論では粘弾性応答の異常は粒子スケールのスローダウンに由来することを予測するが、これは我々の結果と著しい対照を成す。また、これまでの数値シミュレーション研究は粒子運動とその不均一性の研究が主であり、粘性や粘弾性それ自体がガラスを定義する上で中心的な役割を果たすにも関わらず、そのスケール依存性や不均一性に直接的にアクセスした研究はなかった。本研究課題の一連の研究は、流体輸送(粘性)の非局所性という全く新しい視点で動的不均一性の役割に迫った最初の研究であることも明記しておく。
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Research Products
(4 results)