2009 Fiscal Year Annual Research Report
多孔質に閉じ込めたネマチック液晶の示すガラス的挙動の解明
Project/Area Number |
21740310
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒木 武昭 Kyoto University, 理学研究科, 准教授 (20332596)
|
Keywords | 液晶 / 空間拘束 / メモリー効果 / ガラス / 数値シミレーション / 粗視化モデル / 不純物効果 / 相転移 |
Research Abstract |
液晶性物質は、一般に温度をトけることで、アイソトロピック相-ネマティック相-スメクチック相と対称性の低い相へと転移していく。この液晶を狭い空間に閉じ込めることにより学術的にも興味深く、またディスプレイ材料として知られるように工業的にも非常に重要な振る舞いを示す。本研究は、主に数値シミュレーションを用いて、多孔質に閉じ込められた液晶の示すガラス的挙動、またはそれに起因するメモリ一効果についてその物理的メカニズムを明らかにすることを目的としている。 不規則な多孔質にネマティック液晶を閉じ込めると、局所的に配向場は様々な方向を向き、系全体としては等方的になる。この状態に外場を印加すると、配向場を制御することができ、ある決まった方向に揃えることができる。ここで外場を切ると、配同場は別の状態へと変化していくが、本研究によって、その変化の様式にいくつかの緩和モードがあることが分かった。初めに現れる早い緩和モードは液晶の弾性に起因するものであり、液晶ディスプレイに用いられる原理と基本的に同じものである。ここでは、多孔質閉じ込めに由来する配向欠陥の組み換えは見られない。二つめの遅いモードは、配向欠陥の組み換えを伴うものである。液晶の弾性場が緩和するためには局所的に高いエネルギー障壁を越えなければならず、結果として活性化型の緩和を示すことが分かった。これらの2つの緩和は、それぞれ温度・平均孔サイズなどに対して異なる依存性を示す。大きな孔を持つ多孔質を用いれば、遅い緩和の強度を抑制することができ、より高いメモリー効果を生み出すことが示された.さらに、規則的な構造を持つ適当な多孔質を用いれば、遅い活性化型緩和をなくすことができることが分かった。
|