Research Abstract |
熱帯海洋上の対流活動は,対流活発期においては明け方に降水の極大となる一方で,対流抑制期の海上風が弱く静穏な状況下では,夕方に降水の極大となることが良く知られている.海面温度(SST)は,海上風が弱く静穏な状況下で,顕著な日変化を示す.こうした対流抑制期の顕著なSSTの日変化は,海上における夕方の降水活動に影響を与えていることが幾つかの研究で示唆されている.しかし,これまで間接的な状況証拠だけの議論が行われており,SSTと降水の日変化の関係は,未だに結論が出ていない.以上の背景から本研究では,「対流活動に大きな影響を与える可降水量に注目し、数値モデルによるシミュレーションデータと観測データを比較しながら,対流抑制期の日中の可降水量の変動特性と,その変動における海面フラックスや大規模場の運動等の影響を明らかにする」ことを具体的な目的としている.上記の研究目的に対して,22年度は,日中の可降水量変動について定量的な評価を行い,海面からのフラックス量だけは,可降水量の日中の増大を説明するには足りず,大規模場の運動による収束などを考える必要があることがはっきりと示した.そのため,熱帯海洋上の観測データを用いて,大規模場の運動と水蒸気変動の関係を調べたところ,大規模場の運動により水蒸気は3-4日周期の変動をしており,更に,この3-4日変動がSSTの顕著な日周期により変調を受けた結果として,可降水量の日周期がみられることが分かった.この水蒸気の変動は,熱帯で最も卓越する大気擾乱の1つであるマッデン・ジュリアン振動の発達期に観測されたという点で重要で,マッデン・ジュリアン振動のメカニズム解明にも繋がる可能性のある大きな研究成果であると考える(以上の内容を論文として投稿し,受理された).
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