2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740364
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 活志 京都大学, 理学研究科, 助教 (70509942)
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Keywords | 断層 / 応力 / 逆解析 / 個別要素法 |
Research Abstract |
応力逆解析法は,多数の断層の方位を観測し,それらが活動した当時の地質体内部の応力状態を推定する手法である.1980年代以降,この手法は構造地質学や地震学の分野で広く普及してきた.応力逆解析法は,断層の滑り方向が剪断応力と平行であるとの仮説(Wallace-Bott仮説)に立脚しているが,その真偽は定かではない.Wallace-Bott仮説を検証することが本研究の目的である.その手段として,断層活動を再現する数値実験を行い,天然の断層系との比較を通じて数値実験の妥当性を確かめる. 平成22年度は,21年度に引き続き,個別要素法数値実験の試行とプログラムの改良,天然の断層系のデータ収集を行った.数値実験の結果,実験領域全体の歪が小さい間はWallace-Bott仮説にほぼ従う方向の断層滑りが確認された.先行研究による数値実験では初期条件として断層破砕帯を置いていたが,本研究により等方均質な媒体の内部に発生した微小な断層群でも仮説がほぼ成立することが確かめられた.ただし,実験領域の縁辺や大きな断層の付近では仮説に反する剪断運動もあり,境界の影響の低減と擾乱の定量的評価が課題である.歪が大きい場合の有限回転による方位変化も考察する必要がある.一方,野外地質調査により中新世~鮮新世の堆積岩中の断層群の方位データを取得した.平成23年度には,数値実験結果と天然の断層系との比較を行う. また,応力解析法に関する理論的側面の研究も進めた.解析の数値処理が原因で生じるバイアスや,応力の違いを測る指標の解釈について新知見が得られた.成果は,新たに開発した開口割れ目の解析法と合わせて学会・学術雑誌で公表した.
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