Research Abstract |
南半球では連続的な層序にもとづいた海生生物相の変遷(進化や絶滅,多様性変動など)はほとんど明らかになっておらず,地球環境変動との相互関係もよく理解されていない.そこで本研究では,白亜紀当時には南半球に位置していたインド南部を研究対象地域として,海生軟体動物相の変遷史(進化や絶滅,多様性変動)を明らかにし,地球環境変動との関連を理解することを研究目的としている.本年度は,インド南部アリヤルール地域に分布する白亜紀中期から新生代第三紀初期までの地層を対象とした野外調査を行った,特に温暖化の進んでいた白亜紀中期から白亜紀末期を中心に調査を行い,インド南部アリヤルール地域に分布する白亜紀中期~末期までの連続的な層序の地質調査を行うとともに,地層から豊富に産出した海生軟体動物化石の採取を行った.採取した化石は研究室にて岩石より取り出し,種同定を行い,それぞれの地層での多様性の解析を進めている. 本年度までに解析した成果によって,インド南部アリヤルール地域から産出したオウムガイ化石の殻形態の成長様式が明らかになった(Wani and Ayyasami, 2009).個体発生を通じた殻形態の特徴を明らかにし,孵化や成熟した段階を特定するとともに,近縁種との比較を行った.また,その他のオウムガイ化石の孵化したときの殻直径についても新知見があったので,国際学会にて発表し,現在学術雑誌に投稿中である. これらのオウムガイの殻形態の特徴が温暖期に特有のものであるかどうかを検証するため,寒冷期であった石炭紀のオウムガイ化石での解析を進めた.その結果,オウムガイ化石にみられる孵化や成熟を示す特徴は,温暖期・寒冷期を通じて共通であることが明らかになった(Wani and Mapes, 2010).
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