2009 Fiscal Year Annual Research Report
三葉虫はスキソクローラル・アイでどのように物を見ていたか
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21740370
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Research Institution | Gunma Museum of Natural History |
Principal Investigator |
田中 源吾 Gunma Museum of Natural History, 主任(学芸員) (50437191)
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Keywords | 地層 / 光学的古生物学 / 光スイッチ / カンブリア紀 / 進化 / 例外的に保存の良い化石 / 古生物 / 節足動物 |
Research Abstract |
本年度はまず,スキソクローラル・アイを持つ三葉虫の標本の入手を行った.また,スキソクローラル・アイとの比較のため現生・化石ネジレバネの標本を入手した.現生のネジレバネはスズメバチの腹部に寄生していることから,スズメバチ退治の業者からネジレバネが寄生しているスズメバチ標本を入手し飼育を試みた.しかしながら,途中でスズメバチが死んでしまい,ネジレバネの成体を入手することが出来なかった.ネジレバネの化石標本(コハク中に閉じ込められている)について,TEMを用いて眼の観察を試みたが,化石標本には眼の表面のクチクラのみが保存されており,内部の詳細な観察は出来なかった.スキソクローラル・アイは現生の節足動物の単眼に似ていたとする説もある.そこで,現生のハエトリグモの単眼の標本をTEM観察し,網膜細胞の分布様式や密度,レンズの直径など光学的なデータを入手中である. スキソクローラル・アイは三葉虫の中でもデボン紀に栄えたファコヒナ亜目のみが持つ非常に特有な眼である,またスキソクローラル・アイはカンブリア紀前期に現れたホロクローラル・アイから幼形成熟によって派生したと考えられている眼である.そのような特殊な眼がなぜ派生したかを研究することは,カンブリア紀の生物大進化は眼の誕生とその後の急速な眼の進化によって引き起こされたとされる「光スイッチ説」を吟味するのに非常に有効な手段の一つになり得る.「光スイッチ説」は現時点で,カンブリア生物大進化の謎を説明する最も有力な説である.この説を吟味するためにも,眼の化石証拠やその機能形態学は非常に重要なツールとなり得る.
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Research Products
(5 results)