Research Abstract |
本年度は,ファコピナ亜目の三葉虫類の標本を用い,複眼部分の研磨標本を作製した. 作成した研磨標本から,レンズのアウトラインを読み取り,実寸大のマイクロレンズ(直径1.5mm程度)の見積もりを専門業者に依頼した.しかしながら,このサイズのレンズの金型が存在せず,数十万円かかるとの事であった.そこで,レンズの作成は諦め,実標本の複眼両面を海外の専門業者クリーニングしてもらうことにした.この業者は三葉虫の殻を外側だけでなく,内側についてもクリーニングできる技術を持ち,完成した三葉虫の標本は光にかざすと殻が透き通って見えるほどである.複眼の両面がクリーニングされた標本は,今年6~7月の納品予定である. さて,肝心な網膜細胞の密度については,スキソクローラル・アイの個眼と同様な形態・機能を持つと考えられる,現生のハエトリグモの単眼の組織切片標本を作製し,透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影し,密度を見積もった.その結果,直径1.5mm程の単眼型レンズの背後には,15~40万画素の解像度の網膜が存在していたことが推定できた.そこで,同等の解像度を持つ,デジタルマイクロスコープを入手した.クリーニングされたスキソクローラル・アイが納品されれば,焦点を調整しながら,背後にこのデジタルマイクロスコープを装着し,実際に三葉虫が見た世界を復元できる.これは23年度の研究に引き継がれる予定である.また,同時に三葉虫のクリーニング業者には三葉虫の別のタイプの眼「ホロクローラル・アイ」についても,標本の作製を依頼している.
|