Research Abstract |
マントルウェッジにおけるスラブ由来流体による改変プロセスとそれに伴う遷移元素の移動について検討した。2009年度は,特に火山フロント下マントル物質である,ロシア,カムチャツカ弧のアパチャ下山のかんらん岩捕獲岩について集中的に解析をおこなった。岩石資料から作成した薄片について詳細な顕微鏡観察をおこない,特徴的な試料に関してEPMA, LA-ICP-MSを用いて主要元素,微量元素組成をそれぞれ決定した。観察および化学分析から,非常に還元的な状態を示唆する自然鉄やSi-Fe(-Ti)合金がかんらん岩の構成鉱物中の包有物として見出された。この発見は,これまで酸化型化的だと考えられていた島弧マントルが,局所的には非常に還元的な状態にあることを示した。これら強還元鉱物は,非常に還元的な流体が作用することによって形成されたと考えられ,かんらん岩の蛇紋岩化に伴ってさかんに還元流体が生産されるようなスラブ直上では,Feなどの遷移元素を還元層が形成されている可能性を示唆した。これら成果を,Ishimaru et al.(2009)やGoldschimidt 2009などで発表した。 それに加えて,四国,三波川帯の藤原岩体についても同様の記載岩石学的,地球化学的検討をおこなった。藤原岩体には,非常にTiに富む鉱物(チタノクリノヒューマイト,イル乗メナイト,アゾプロアイト)が観察され,H_2Oを主体とするような流体では移動しにくいと考えられているTiの移動過程について検討した。この成果は,AOGS 2009年会(シンガポール),日本鉱物科学会2009年度・年会(北海道)において発表した。
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