Research Abstract |
マントルウェッジにおいて,スラブ由来流体による島弧マントルの改変プロセスとそれに伴う遷移元素の移動プロセスの解明を目的として,これまでに引き続き,火山前線下マントル物質であるアバチャ火山とシベルッチ火山に産するかんらん岩捕獲岩について処理・解析をおこなった。また,オマーンオフィオライト底部のかんらん岩(蛇紋岩)や三波川帯の変成岩に伴う変かんらん岩体(藤原岩体)についても試料処理・機器分析をおこない,遷移元素の濃集過程について検討した。その結果は以下の通りである。 アバチャ火山のかんらん岩捕獲岩中に観察されていた,鉄やニッケル,硫黄に富む粘土鉱物やそれに伴う珪酸塩鉱物と硫化鉱物の化学組成を再検討した。その粘土鉱物は白金族元素や硫黄にも非常に富んでいることから,硫黄成分に飽和していない,酸化的な珪酸塩メルトの変質物である可能性が非常に高い。この白金族元素を含む遷移元素の濃集は,これまでアバチャ火山のかんらん岩にのみ観察され普遍性は認められていない。しかし,シベルッチ火山のかんらん岩捕獲岩中にも,アバチャ火山のかんらん岩と同様の交代作用や硫化鉱物の形成が認められることから,遷移元素の濃集が期待されるため,更なる検討が必要である。 オマーンオフィオライト底部のかんらん岩には,多量の角閃石の形成が認められ,単斜輝石には軽希土類元素やSrやBaなどのLIL元素が濃集していることが確認された。遷移元素に関しては,少量の硫化鉱物の形成が認められるものの,それほど大規模な濃集は確認されなかった。しかし,藤原岩体では大規模なチタンの濃集が認められ,それにはメタンなどの炭化水素に富む流体が関与していることが分かった。
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