2010 Fiscal Year Annual Research Report
計算機シミュレーションを用いた造岩鉱物中拡散の素過程の解明
Project/Area Number |
21740376
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三宅 亮 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10324609)
|
Keywords | 計算機シミュレーション / ペリクレース / 拡散 / 空孔 |
Research Abstract |
鉱物の内部組織の多くは原子の拡散によって律速されるため、鉱物中の原子の拡散機構が重要であり、古くから多くの拡散実験が行われ拡散係数が求められてきた。本研究では、コンピューターシミュレーションを用いて、拡散の素過程を原子レベルで解明し、拡散係数を推定するための基礎を確立することを目的としている。 ペリクレース(MgO)中の陽イオンと陰イオンの空孔の取り方について、陽イオン、陰イオン空孔がそれぞれ独立に存在するuncoupled vacancy(いわゆるSchottky vacancy)と互いに隣接して空孔を作るcoupled vacancyが考えられる。本年度は、まずこの2種類の空孔形成エネルギーおよび空孔移動の活性化エンタルピーを電子密度関数(DFT)計算により求めた。計算の結果、ひとつの計算セル中でuncoupled vacancyを作り計算したところ、空孔距離が6Å以上になるとことでほぼ一定になることがわかった。さらに、セルサイズが小さいときには補正したSchottky vacancyの形成エンタルピーが最も小さいが、セルサイズが最も大きい系ではcoupled vacancyの形成エンタルピーが最も小さくなった。しかし、空孔濃度としてはSchottky vacancyの方を作ると考えられる。次に、空孔移動の活性化エンタルピーについて、同じく2種類の空孔について計算を行ったところ、Schottky vacancyの空孔移動活性化エンタルピーは小さいことがわかった。これらのことから、例えば2000Kでの拡散係数はSchottky vacancyのほうがcoupled vacancyよりも6桁も大きいことがわかった。
|