2010 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理シミュレーションによるカルシウム珪酸塩ペロヴスカイトの高温高圧弾性研究
Project/Area Number |
21740379
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
土屋 卓久 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (70403863)
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Keywords | 地球・惑星内部構造 / 第一原理分子動力学法 / 地殻・マントル物質 / 高圧構造相転移 / ペロヴスカイト |
Research Abstract |
CaSio_3ペロヴスカイトは下部マントルの主要構成鉱物の一つであり、地球深部の構造や物質構成を解明する上で、その性質を詳しく理解することが重要である。CaSiO_3ペロヴスカイトは高温では理想的立方晶ペロヴスカイト構造を持つが、室温下ではわずかに正方ペロヴスカイト構造に歪むことが知られていたが、平成21年度の研究により下部マントルの温度圧力領域では立方構造が安定となることが明らかとなった。安定結晶構造の決定に引き続き、平成22年度は下部マントルの温度圧力条件下におけるや弾性特性の第一原理的決定を行った。定温第一原理分子動力学法に基づき、80原子からなる大規模計算セルに対し十分に密なk点サンプリングを適用して電子状態の計算精度を注意深く確認したうえでシミュレーションを実行した。その結果、立方晶相においてもSiO_6八面体の回転モードの励起が、特にせん断歪みに対する緩和において極めて重要な役割を果たすことが見いだされた。これにより八面体の回転緩和を考慮していなかった従来の計算に比べ、剛性率が最大約39%、弾性波速度、特にS波速度が最大約22%低下することがわかった。得られた結果を用いて多相系弾性特性を算出したところ、CaSio_3ペロヴスカイトを多量に含む玄武岩質岩石の弾性波速度が、従来なされていた見積もりよりも大きく低下することが明らかとなった。これらの結果から、下部マントルにおいて観測される特徴的な弱いS波低速度異常やS波速度と体積弾性波速度の逆相関が、温度不均質ではなく沈み込んだ海洋地殻による化学不均質により説明できることがわかった。
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