Research Abstract |
本年度は,「高圧下における部分溶融したかんらん岩の弾性波速度測定技術の開発」のために,特に超音波周波数が測定に及ぼす影響について研究を行った.本研究では,従来の研究で用いられてきた60MHz(P波),40MHz(S波)のみでなく,より低周波数の20MHzより60MHzまで10MHzおきにデータを収集し,超音波周波数の変化が測定に及ぼす影響を検討した.実験試料としてかんらん石に玄武岩を加えたかんらん岩試料を用い,部分溶融後の弾性波信号強度の変化を調べた.その結果,試料背面から反射した弾性波の強度は明らかに周波数に依存することが観察された.P波,S波ともに低周波数下で強度は強く高周波数下では強度が低下する.特に,メルト量の比較的多い条件下においては,従来用いていた40MHz下においてS波信号は観察されなかったが,20MHz条件下においてはS波信号を得ることに成功した.これら観察された試料背面からの弾性波強度の周波数依存性は,試料中の弾性波減衰の影響を表していると考えられる.試料中における弾性波強度の減衰は,-πLf/Qv(f:周波数,L:試料長,Q:減衰係数,v:弾性波速度)に比例すると考えられ,部分溶融試料のようなQ^<-1>の値が大きいと予想される試料においては,周波数依存性にかかる係数(-πL/Qv)が大きくなる.その結果,周波数増加と共に弾性波強度は強く低下したと考えられる.以上のように,本年度の研究から低周波数の弾性波信号を用いることにより部分溶融した岩石の弾性波速度測定を行うことに成功した.
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