2009 Fiscal Year Annual Research Report
プレソーラー粒子の高精度同位体分析による重元素合成プロセスの解明
Project/Area Number |
21740388
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 哲也 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 准教授 (00467028)
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Keywords | 元素合成 / 重元素 / 同位体 / プレソーラー粒子 / TIMS / ICPMS |
Research Abstract |
本研究は、始原的隕石に残存しているプレソーラー粒子の重元素の存在度・同位体組成を高精度分析し、物質の基本構成要素である元素の生成過程を解明することを目的とする。特に未だ不明な点も多い鉄以降の重元素合成過程(s^-, r^-, p^-プロセス)に着目する。本年度当初は以下の研究を行なう予定であった。 (1)隕石からプレソーラー粒子を含む耐酸性残渣相を抽出し、鉱物学的記載を行う。(2)プレソーラー粒子を異なる鉱物ごとに相互分離する手法を開発。(3)分離したプレソーラー粒子中の重元素存在度をICP-MSにより定量。(4)プレソーラー粒子を汚染無く扱うため、クリーンルームを整備。 (1)に関しては始原的隕石であるTagish LakeとAllendeについて酢酸・硝酸・塩酸・フッ化水素酸による段階的酸処理を行い、残渣の鉱物学的記載をEPMAにより行なった。その結果、塩酸処理でかんらん石が溶解することが分かり、プレソーラーケイ酸塩の一部はフッ化水素酸なしで溶解することが示唆された。次に(2)に関して、岩石試料を水中でレーザーサンプリングする新しい分析法の開発に着手した。ガラス質標準試料を用いた予備的実験では、レーザー照射による元素分別は生じないことが確認されたが、開発は未だ萌芽的段階であり、耐酸性残渣に適用するには至っていない。そのため、(3)の実施は次年度に持ち越された。(4)については東工大地惑専攻に新たに完成したクラス100のクリーンルームにおいてプレソーラー粒子を扱うための環境整備を行なった。 この他、米国メリーランド大学において、隕石の耐酸性残渣および上澄み液の高精度Os同位体分析を行なった。その結果、隕石中にs-およびr-プロセスで合成されたOsを保持する複数の異なる相が存在することが判明した。r-プロセスで合成されたOsは比較的弱い酸によって抽出される一方、s-プロセスのキャリアは酸に対して非常に強い耐性を持つことが明らかとなった。この研究成果は国際誌EPSLに掲載された(Yokoyama et al. 2010)。
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Research Products
(12 results)