2010 Fiscal Year Annual Research Report
断層運動時の間隙水圧上昇に伴う元素の移動機構の理解
Project/Area Number |
21740392
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
谷水 雅治 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, サブリーダー (20373459)
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Keywords | 断層 / 破砕帯 / 化学状態分析 / 放射光 / 硫黄同位体 |
Research Abstract |
1999年に起こった台湾Chi-Chi地震で滑った台湾チェルンプ断層から掘削されたコア試料では、顕微鏡下での鉱物観察から断層中央部で硫化物鉱物の消失が認められた。これを化学的に確認するために、硫黄の濃度および同位体比を筑波大学の協力研究者のもとで分析した。その結果、断層中央部では硫黄の濃度の系統的な減少は認められなかった。これに対して硫黄同位体比は断層中央部で明らかに重い値を示していた。このことは、断層中の硫黄と、断層を流れる流体中の硫黄の間で物質の出入りがあり、流体中の硫黄が海水起源の硫酸イオンのような重い同位体比をもつものであれば、総量としては濃度は断層全域で一定となるが、断層中央部の流体起源の物質の寄与が大きい部分は重い同位体比となり、測定結果を説明することが可能である。高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所での放射光X線を用いた硫黄のX線吸収端構造(XANES)の分析では、断層中央部では硫化物の消失が確認され、硫酸イオンに起因するスペクトルが観測された。つまり、硫黄は硫化物としてではなく、硫酸塩の形態で断層内に存在していることが明らかになった。 この結果は、日本地球惑星科学連合2010年大会と日本地球化学会2010年度年会において発表した。 この種の研究では、岩石-流体間の元素の分配を把握することが重要である。特に粘土鉱物と溶液の間の元素の分配に関する知見が重要となるが、アンチモンの挙動について常温での河川水と鉄水酸化物(フェリハイドライト)の間の元素と同位体の分別の程度と存在化学種についての研究が論文として査読付英文誌に掲載された。
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