2011 Fiscal Year Annual Research Report
断層運動時の間隙水圧上昇に伴う元素の移動機構の理解
Project/Area Number |
21740392
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
谷水 雅治 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, サブリーダー (20373459)
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Keywords | 断層 / 破砕帯 / 化学状態分析 / 放射光 / 曹長石 |
Research Abstract |
台湾チェルンプ断層から掘削されたコア試料では、微量元素の断層中央部での濃度の増減変化のパターンから、断層運動時に250度以上の高温になったことを我々のグループは2008年に明らかにしたが、このような高温環境下でおこると予想される鉱物相の変化については確認されていなかった。そこで、放射光X線を用いたストロンチウム(Sr)のX線吸収端構造(XANES)を利用して、鉱物相の変化について考察した。ここでターゲットとなるのは、曹長石の晶出が確認されるかどうかである。過去の水熱実験による岩石-流体相互作用の研究では、高温では流体側からナトリウムやSrが減少するため、岩石側に曹長石の晶出が予想されているが、それを実際に確認した例はない。これは、長石が岩石には普遍的な鉱物であり、若干の量の増加はXRDでは検出できないことに起因している。本研究で用いるXANESは、鉱物相ではなく元素に着目し、元素周囲の配位環境の変化から、鉱物相を推定しようとするものであり、このような場合非常に強力な手法となりうる。 XANESの測定のためには、最適な標準試料を作成することが重要である。一般に曹長石は花こう岩に多く含まれるが、これらの岩石はSrをあまり含まないため、良質なXANESスペクトルが取得できない。本研究では高圧変成岩から曹長石を分離することにより、Sr濃度の高い曹長石試料を確保した。曹長石に加えて、チェルンプ断層での元素濃度変化から、Srのホスト鉱物相として考えられる、石膏・方解石・灰長石を標準試料として断層試料のスペクトル測定を行った。その結果、曹長石のスペクトルと断層中央部から得られたスペクトルは非常によく一致し、Srに富む曹長石の晶出を確認した。つまり、鉱物学的に見ても、この断層は250度以上の高温の履歴があることが確認された。この結果は、日本地球化学会2011年度年会において発表した。
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