2009 Fiscal Year Annual Research Report
溶液内マトリックスアイソレーション法を用いた水和構造の解明
Project/Area Number |
21750003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梶本 真司 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (80463769)
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Keywords | 水和構造 / 下部臨界点 / クラスター / 温度ジャンプ / 相分離 / ラマン分光法 / レーザー |
Research Abstract |
21年度の研究では、温度上昇に伴って2相に分離する事が知られているブトキシエタノールと水の混合溶液について、臨界温度以下の1相状態を対象としてラマン分光測定を行った。その結果、臨界温度よりも低い室温程度であっても濃度によってその溶液構造が大きく異なり、特に濃度が低いときにはクラスター等の特異な構造を取っている事が分かった。このような構造が相分離過程において新しい相の核となっていると考えられる。 また、このような混合溶液中にフォトクロミックな性質を示すスピロピラン分子を溶解させることにより、光異性化に伴って溶液の相分離温度が変化する事を見いだした。溶液に可視光を照射し、溶媒分子をスピロピラン型に保った溶液では、メロシアニン型に保った溶液に比べて0.3K程度相分離温度が低かった。この結果は、メロシアニン型からスピロピラン型への光異性化に伴って溶質分子の分極が大きく変化し、そのため溶質分離の周りの溶媒分子の構造が変化したためと考えられる。さらに、この溶液にナノ秒程度パルスレーザーを照射し、光異性化をナノ秒程度の時間幅で誘起する事により、溶液構造の変化と相分離過程を誘起し、それに伴う光散乱の時間変化を観測する事に成功した。この光誘起相分離過程では、光異性化に伴って溶媒分子であるスピロピラン分子の周りに新しい相のもととなるブトキシエタノールのクラスターが形成していると考えられ、このダイナミクスを詳細に追う事により、溶液中のクラスターのダイナミクスを解明できると期待している。
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