2010 Fiscal Year Annual Research Report
溶液内マトリックスアイソレーション法を用いた水和構造の解明
Project/Area Number |
21750003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梶本 真司 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (80463769)
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Keywords | 水和構造 / 下部臨界点 / レーザー / 温度ジャンプ / 相分離 / ラマン分光法 |
Research Abstract |
22年度の研究では、21年度に実験的に確認したブトキシエタノールと水の混合溶液のラマンスペクトルの濃度依存性に対して、その他のアルコール/水混合系と比較しながら量子化学計算を行い、水分子との錯体形成に伴う分子内結合の変化について調べた。また、温度上昇に伴って2相に分離するブトキシエタノール/水混合溶液を試料として、レーザー温度ジャンプ法を用いて相分離過程を誘起し、過渡的に形成した溶液内の微小構造を反応場として金ナノ構造体を作製した。これまでの研究からレーザー温度ジャンプ法によって混合溶液中に相分離過程を誘起すると、温度ジャンプ後1μs程度で数10nm程度のそれぞれの微小相が生成し、その後はそれらの相が巨視的に成長するように相分離過程が進むと考えられている。この相分離初期過程に現れるクラスター様な微小相を反応場として、金イオンの光還元反応を誘起すると、相の大きさによって様々なサイズ・形状を持つ金ナノ構造体が得られることが分かった。特に温度上昇後3μs後に紫外光パルスを照射し、光還元反応を誘起すると、1辺数μm、厚さ50nm程度の四角いプレート状の金ナノ構造体が得られたのに対して、5μs後に光還元反応を誘起すると200nm程度の比較的小さな四角いプレートが選択的に得られた。また、10μs以上経ってから溶液に紫外光パルスを照射すると四角いプレート状の構造体はほとんど得られず、球場のナノ粒子が多く観測された。これらの結果は相分離過程が進み、相のサイズが大きくなるに従って、微小相の反応場としての性質が過渡的に変化し続けていることを示している。また、サイズ制御された四角いプレート状の金構造体作製の報告例はこれまでにないことから、相分離過程にある溶液はこれまでにない新規な反応場となっていると考えられる。今後、さらにいろいろな金属に応用することによって、新たな金属ナノ構造体の創製が期待される。
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