2010 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体の局所構造に起因する動的特性とマクロスコピックな物性との相関の解明
Project/Area Number |
21750014
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山本 晃司 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 准教授 (70432507)
|
Keywords | イオン液体 / テラヘルツ / 局所構造 / 化学物理 / ダイナミクス |
Research Abstract |
これまでに、イオン液体が局所的には均一に分布しているのではなく、極性・非極性のミクロドメインを構成し、ナノメートルサイズの構造を有することが明らかにされてきた。従って、イオン液体を機能性溶媒として利用する場合、イオン液体やイオン液体混合溶液のミクロスコピックな描像を明らかにする必要がある。本研究課題では、THz-TDSによってイオン液体の局所構造に由来する振動モードの詳細を明らかにし、イオン液体の微視的描像とそのダイナミクスを明らかにすることを目的としている。 イオン液体のミクロスコピックな混合形態に関して、水とBMIm^+/BF_4^-の混合溶液(イオン液体:水=1:1~1:32(モル比))のテラヘルツ誘電率の希釈依存性を調べた。濃度変化に対して、連続的にBMIm^+/BF_4^-から水のスペクトルにテラヘルツ誘電率が推移した。濃度の近い2つの混合溶液のスペクトルから、Brugemanモデルを用いて各成分のスペクトルを導出した結果、誘電率の実部・虚部ともに、混合溶液中のBMIm^+/BF_4^-のテラヘルツ誘電率スペクトルは、純粋のBMIm^+/BF_4^-のスペクトルと類似していた。同様な結果は、水のテラヘルツ誘電率スペクトルでも観測された。もし、BMIm^+/BF_4^-と水がミクロスコピックに完全に混合しているのであれば、イオンの周りに存在するイオンが水分子と交換するため、イオン間振動が大きく変化(イオン-水分子間の振動の割合が増加)し、混合溶液中のイオン液体のスペクトルは大きく変化するはずである。しかし、実験結果はこの仮定を否定して、混合溶液中でもBMIm^+/BF_4^-と水のそれぞれのバルクの性質を保持していることを示している。つまり、マクロ的に混合したBMm^+/BF_4^--水混合溶液は、ミクロ的にみると一様に混合しておらず、相分離していることが示唆される。
|