2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21750019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 和宏 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 研究員 (00511255)
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Keywords | 生物物理 / 量子化学 / 生物・生体工学 / 励起状態 |
Research Abstract |
ヒトの色覚を担う赤・緑・青色錐体視物質に関して、吸収波長制御機構の解明を試みた。ホモロジーモデルに対する電子状態計算(SAC-CI+QM/MM法)によって、実験の吸収スペクトルの定量的かつ系統的な再現に世界で初めて成功し、タンパク質中で特異的に起こる励起エネルギーの青方シフトが、第一励起状態の主配(HOMO-LUMO0遷移)に関与する分子内電荷移動と、レチナールπ鎖上に形成されたタンパク質由来の静電場に起因することを突き止めた。また、各視物質の吸収波長制御おける物理的起源は、第一にタンパク質の生成する静電効果、第二に色素の捩れ構造にあることを解明した。さらに、吸収波長制御に大きく寄与する11アミノ酸残基を見つけ、これらの分子機構に関して、水素結合ネットワーク、アニオン結合部位、水酸基双極子の配向という観点から解明することに成功した。 励起エネルギー移動(EET)の電子・電子相互作用項(PCI)を正確に計算するための手法(TDFI法)を考案し、キサントロドプシン中の2つの色素間(カロテノイド-レチナール)で観測されるEETに適用した。これまでの計算手法では再現不可能であったPCIの実験値をTDFI法は高精度で再現することに成功した。次に、タンパク質表面へのカロテノイド結合様式とEET効率との相関を探った。その結果、2つの色素の配置がEET効率に最も大きく寄与すること、2つの色素間距離は副次的な因子であることを突き止めた。これらの結果は、レチナールタンパク質の吸収波長をカロテノイド結合の観点から人工的にデザインするという新たな可能性を示した。
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Research Products
(8 results)