2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子の光や磁場に対する外場応答制御に向けた高精度分子理論の開発
Project/Area Number |
21750028
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
倉重 佑輝 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (30510242)
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Keywords | 量子化学 / 電子状態理論 / 分子物性 / 光学応答 / 磁場応答 / 多配置電子状態 |
Research Abstract |
本研究の目的は,光や磁場に対する大規模分子系の応答機能制御に向けた分子理論の開発である.具体的な対象分子は,特異的な非線形光学応答や磁場応答特性が予測されるポリカルベンやグラフェンナノリボンなどである.平成21年度の研究成果により分子スケールの大きさに対応可能な理論の開発に成功したが,上記のような二次元π共役系分子は外場の無い非摂動の基底状態においても通常の電子状態理論では扱うことが困難な複雑な電子状態(多配置電子状態)となることがしばしばであり,それに対応するため平成22年度は多配置電子状態を高精度に扱うことができる密度繰り込み群法を基礎に高スピン状態,励起状態,外場応答への拡張を行った,種々のスピン状態計算に関しては繰り込み基底をClebsch-Gordan変換によりスピン許容な基底に変換し,波動関数が常にスピン固有関数となるようにすることで複数の電子状態が近接する状況下で起きるスピン混入の問題を解決した.励起状態に関しては繰り込み基底の生成において,基底・励起状態の射影密度を混合することにより励起状態に対しても高精度な計算が可能になった.これらの方法を用いてグラフェンナノリボンの計算を行ったところ,例えば異なるスピン状態間のエネルギー差において従来の密度汎関数法とは全く異なる結果が得られた.すなわちこれらのπ共役系分子の磁性に関しては多配置電子状態が本質的であることを示しており,当該研究で開発した密度繰り込み群を基礎にした分子理論がこれらの問題に対して有効であることを明らかにした.
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Research Products
(6 results)