2010 Fiscal Year Annual Research Report
高強度レーザー場を用いた新しい振動分光法による孤立分子クラスター研究の新展開
Project/Area Number |
21750029
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
長谷川 宗良 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20373350)
|
Keywords | 高強度レーザー光 / クラスター / 分子間ポテンシャル |
Research Abstract |
本研究では、「非共鳴高強度短パルスレーザー場を用いた新しい振動分光法を開発し、電子基底状態における孤立分子クラスターの分子間ポテンシャルを決定すること」を目的としたものである。具体的には、遅延時間を持つ2つの高強度レーザー場により分子振動を励起し、遅延時間に依存した振動状態分布変化の測定を行う。得られたビート信号からエネルギー準位を決定できることを実証し、クラスターの分子間振動エネルギー準位に関する情報を得ることを目指したものである。 上記の手法を、ベンゼン2量体、3量体およびNO-Arクラスターに適用した。ベンゼン2量体では、既報の分子間振動に由来する低波数モードと一致する信号を得ることができた。また、3量体に関しては、過去に報告されている分子間振動バンドに加え、新しい振動バンドを見いだすことができた。これらの結果は、本研究で提案した高強度短パルスレーザー光を用いた振動分光法が、上手く機能することを示すものである。次に、分子間ポテンシャルの詳細が報告されているNO-Arを対象として同様の実験を行った。観測された振動準位は、分子間ポテンシャルから計算された振動準位と良い一致を示した。しかし、20cm^<-1>を超える高波数領域では、計算と実験の一致は必ずしも良くなかった。これは現在提出されているポテンシャル曲面の修正を示唆しており、さらなる解析によって実験と計算が一致するようなポテンシャル曲面を与えることができる。 本研究では、高強度レーザー光を用いた振動分光法の開発に成功し、いくつかの系で振動準位を観測できた。これは本研究の目的をほぼ達成したと言っていいであろう。もう一つの目標であったポテンシャル曲面の決定・改良については、さらなる解析によって達成されるであろう。
|
Research Products
(6 results)