2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規ボウル型カルベン配位子を活用した高反応性ニッケル錯体の開発
Project/Area Number |
21750038
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐瀬 祥平 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特任助教 (90515165)
|
Keywords | 有機金属化学 / N-複素環カルベン / ニッケル / 銀 / パラジウム |
Research Abstract |
本年度は、0価Ni源を用いたボウル型カルベン配位子を有するNi錯体の合成に加えて、同配位子を有する2価ニッケル錯体の合成およびそれを用いた0価錯体の合成を目的として種々検討した。また、Niと同族のPd錯体の反応性を明らかにした。 0価Ni源としてNi(cod)_2を用い、末端の芳香環上にメチル基を有するボウル型カルベン(ITmt)との反応を行ったところ、Niに対し一つのITmtおよびcodがNiに対し配位した錯体が得られた。また、キャビティの大きいボウル型カルベン(ITmq)の場合も同様の結果であった。ITmtを有する錯体について、種々反応性を検討したところ、触媒的アルキンの三量化反応が効率よく進行することが分かった。炭素-水素結合や炭素-酸素結合の切断反応は、室温付近では反応は全く進行せず、加熱条件では錯体の分解が見られた。 次に、2価錯体の合成を目指し検討を行った。種々の2価ニッケル源とITmtの反応では、目的の生成物は単離できなかった。そこで、カルベン供与体としてカルベン-銀錯体(ITmtAgCl)との反応を検討した。ITmtAgClは、Ir、Pd、Auといった金属に対しては、良好なカルベン供与体として機能するものの、Niを用いた場合は意外なことに目的物は得られなかった。 ボウル型カルベン配位子の特性を明らかにするべく新規なITmtPdCl_2を用い、触媒的鈴木-宮浦カップリング反応を検討した。種々のArBrとPhB(OH)_2の反応を最適化したところ、DMF溶媒、塩基としてCs_2CO_3を用いた場合30℃で速やかに進行し、高収率でビアリールが得られた。興味深いことに、反応温度を50℃以上にすると触媒種が速やかに失活した。これらより、ボウル型カルベンITmtは従来のカルベンに比べ金属錯体の熱安定性が低いものの、触媒反応にも活用できることが期待できる。
|
Research Products
(11 results)