2010 Fiscal Year Annual Research Report
近接アセチレンの渡環環化反応を利用したゼトレン誘導体の合成とその物性評価
Project/Area Number |
21750046
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
梅田 塁 関西大学, 化学生命工学部, 助教 (70467512)
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Keywords | 多環式芳香族化合物 / アセチレン / 渡環環化反応 / ゼトレン / デヒドロアヌレン |
Research Abstract |
本研究では、1950年代に合成が達成されたゼトレンに注目し、ジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンの近接アセチレンの高い反応性を利用するという、新規なアプローチでゼトレン誘導体の合成とその物性について明らかにすることを目的に研究を行った。前年度合成法を確立したゼトレン前駆体となるジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンは、アセチレンが非常に近接しており、不安定であることが予想されたが、空気中で充分に取り扱いができるほど安定であることがわかったが、一般的な有機溶媒に対して非常に溶解度が悪いため、分離精製が非常に困難であるといった問題点が挙げられた。そこで、本年度は、まずジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンの溶解性の向上を目的に、ジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンにtert-ブチル基を導入することを試みた。ナフタレンを出発原料として用い、既報の論文に従い、フリーデルクラフツアルキル化によりナフタレンにtert-ブチル基を導入し、ニトロニウムイオンの求電子付加と還元によりジアミノジ-tert-ブチルナフタレンを合成した。その後、tert-ブチル基のないゼトレン誘導体の合成と同様の方法で、テトラ-tert-ブチルデヒドロ[10]アヌレンを合成し、渡環環化によりtert-ブチル基を導入したジョードゼトレン誘導体へと導いた。次に、薗頭カップリング反応を用いて、フェニルアセチレン、ジメチルアミノフェニルアセチレン、ニトロフェニルアセチレンとクロスカップリングさせることにより、電子供与性基や電子求引性基を有するゼトレン誘導体を合成した。合成したいずれのジ-tert-ブチルゼトレン誘導体は高い安定性と溶解性を示すことがわかった。これらゼトレン誘導体の紫外可視吸光スペクトル、蛍光スペクトル、ならびにサイクリックボルタンメトリーの測定を行ったところ、導入したアミノ基、ニトロ基の置換基に依存し、コアとなるゼトレンの電子状態が大きく変化することが明らかとなった。さらに、量子力学計算もあわせておこなった。
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Research Products
(8 results)